タバコの基礎知識



タバコとメタボ

タバコはメタボを悪化させる[1]

「メタボリック・シンドローム」(内臓脂肪症候群)とは、心疾患などを発症するリスクが高まることから注目をあびるようになった新しい病気の概念で、その基盤には“内臓脂肪の蓄積”があるとされています。ウエストサイズ(へそ回り)が男性85cm以上、女性90cm以上で、かつ血圧・血中脂質・血糖の3項目のうち2つ以上の数値が高い場合は、メタボリック・シンドロームと認定されます。1項目だけが高い場合は、「予備軍」として注意が必要な状態です。

2006年に実施された「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)によると、40~74歳の中高年層でメタボリック・シンドロームが強く疑われる人とその予備軍を合わせると、男性51.5%、女性20.3%にも達しています。

喫煙者のメタボ予防・改善は、まず禁煙から

メタボリック・シンドロームやその予備軍である場合、なぜ真っ先に禁煙すべきなのでしょうか。まず、喫煙はメタボリック・シンドロームと並んで、独立した動脈硬化の原因です。喫煙は血管への直接障害作用のほか、糖代謝や脂質代謝の障害、凝固などが複合したメカニズムによって動脈硬化を進行させ、その結果、喫煙すると動脈硬化性疾患のリスクが上昇します。

さらに、喫煙にメタボリック・シンドロームが重なると、動脈硬化がさらに進行して、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)や脳梗塞にかかる危険が増大するのです。メタボリック・シンドロームに該当する人の発症リスクは、そうでない人と比べると虚血性心疾患で1.9倍、脳梗塞で1.4倍高くなります。これに加えて喫煙者の場合、そのリスクは虚血性心疾患で3.3倍、脳梗塞で2.5倍も高くなってしまいます。

健康的な食生活や適度な運動は健康の基本ですが、それらは一生取り組まなくてはならない課題です。その点、禁煙は完全に取り除くことができる病気の原因です。しかも近年の研究の進歩により効果的な禁煙方法が確立し、比較的らくにしかも確実に禁煙ができる時代となりました。まず禁煙から取り組んで喫煙のリスクを減らしておいてから、食事や運動の改善に取り組むことをおすすめします。

循環器疾患死亡における喫煙者の相対危険度

  男性 女性
全脳卒中 1.39(1.13〜1.70) 1.65(1.21〜2.25)
脳梗塞 1.23(0.90〜1.69) 1.64(0.97〜2.79)
くも膜下出血 2.98(1.34〜6.63) 3.25(1.92〜5.52)
虚血性心疾患 2.51(1.79〜3.51) 3.35(2.23〜5.02)
全循環器疾患 1.60(1.39〜1.84) 2.06(1.69〜2.51)

非喫煙者を基準として相対危険度を算出、( )内は95%信頼区間
(IsoH,2005)

メタボリックシンドローム(MS)と動脈硬化―喫煙の影

日本人男女9,087例(6地域)を対象とした18年間の追跡調査成績。
多変量解析(性、年齢、地域、収縮期血圧、肥満度(BMI)、総コレステロール値、飲酒、糖尿病を補正)。
(IsoH,2007)

40~74歳の中高年層でメタボが疑われる人とその予備軍は、男性が半数以上、女性が2割に達している。メタボの予防、改善には運動や食事も大切だが、喫煙者は禁煙することが第一である。

タバコはメタボを悪化させる[2]

喫煙を続けていると糖尿病になりやすい

糖尿病といえば、肥満、過食、運動不足、遺伝的素因が知られていますが、喫煙も糖尿病を発症しやすくすることがわかってきました。喫煙すると糖尿病になりやすい理由は、喫煙によって交感神経の緊張が高まり、アドレナリンなどのストレスホルモンによって血糖が上昇することのほか、ニコチンなどの成分がインスリンの抵抗性(体内での効き具合が悪くなる状態)を引き起こすためと考えられています。

さらに、糖尿病の人が喫煙すると、心筋梗塞や脳梗塞にかかりやすくなるだけでなく、腎臓の機能が悪くなり人工透析を必要とする腎不全に陥りやすいこともわかっています。禁煙すると体重が増えて糖尿病にかえって悪いといった誤解をする人がいますが、科学的な証拠はありません。糖尿病の予防と治療のいずれにおいても禁煙が重要なのです。

喫煙状況別にみた糖尿病の発症リスク―メタアナリシス研究

世界で行われた25の研究を統合した最近の研究報告によると、喫煙は、他の要因(肥満度、身体活動、飲酒など)の影響を取り除いても糖尿病の発症リスクを1.4倍上昇させることが明らかにされています。喫煙本数が多いほどリスクが上昇することや、禁煙者ではリスクが低下することも示されています。25編の研究にはわが国の研究が7編含まれていますが、いずれも両者の関係を示す結果でした。
(WilliC,2007)

「メタボ」と「タバコ」を掛け合わせた、「メタバコ」という言葉がある。喫煙がメタボと深く関わっていることを示した造語で、今後、禁煙がメタボ対策のひとつとして重要であることが認知されれば一般に知れ渡ることであろう。

メタボリック・シンドロームそのものにもかかりやすい

メタボリック・シンドロームの発病にも喫煙は関わっています。その理由は、喫煙が脂質代謝に影響して、中性脂肪が上昇したり、善玉のHDLコレステロールが低下したりすることと、前述のように、血糖の上昇やインスリンの抵抗性が高まるからです。

また、喫煙しているとコルチゾールや性ホルモンへの影響を介して内臓脂肪がつきやすいことや、喫煙者は食事の偏りや飲酒、身体活動不足などの割合が多いことも関係しています。

平成20年度からメタボに着目した健診がスタートしました。禁煙はメタボ対策においても大変重要なのです。

喫煙によるメタボリック・シンドロームの発症リスク

わが国で職域の健診受診者約3,000人を追跡した研究によると、喫煙本数に比例してメタボリック・シンドロームの発症のリスク(年齢、飲酒量、身体活動などで補正)が有意に上昇し、1 日31本以上の喫煙者では非喫煙者に比べて1.6倍高くなることが示されました。
(NakanishiN,2005)

喫煙は糖代謝や脂質代謝の異常を引き起こすために、糖尿病やメタボリック・シンドロームにもかかりやすくする。糖尿病やメタボリック・シンドロームの予防からも禁煙は重要である。



このページのトップへ